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  • 何年も使い込みたい。現場のプロに愛される丈夫な革道具│東谷山〈丸山革具店〉

己の仕事に一直線。鹿児島で活躍するプロフェッショナル

たとえば、地域住民の生活に欠かせない店、鹿児島から全国・世界へ発信するアトリエ。愛されるモノづくりやサービスには、妥協することなく“仕事”と向き合うプロフェッショナルがいます。そんなプロの横顔を、少しだけ覗いてみませんか。

 

ハードな現場でプロに愛される堅牢性。手仕事の革道具

谷山電停から徒歩5分。鹿児島から全国に名を轟かせる一軒の工房を訪ねました。カタタタタ……と軽快な機械音が響く作業場には、様々な色や形の革、糸、金具、工具、そして年代物の足踏みミシンが所狭しと並んでいます。

そのミシンを操るのが、今回会いに来たプロフェッショナル。〈丸山革具店〉の橋口康隆さんです。昭和22年創業当初は馬具や馬飾りなどを制作していたという〈丸山革具店〉。後に鞄や袋物の製造に転向し、電力、通信、鉄道、銀行業などを中心に企業からの特注品を手掛けるようになります。二代目の橋口さんはこの道25年。今や全国に知られる革職人です。

【上写真】奥:低圧ゴム手袋収納腰袋 2,700円(税別)、左手前:補助ロープ収納袋 1,800円(税別)、右:腰袋 13,000円(税別)【下写真】丸工具袋 絶縁タイプ 中 6,500円(税別)

 

〈丸山革具店〉の製品の特徴は、とにかく丈夫で長持ちすること。日に何十回と工具を出し入れする腰袋や工具挿し、重い書類に耐える渉外鞄……現場で活躍する鞄は、時に乱雑に扱われても決して壊れない堅牢性が重要です。「高所で作業する際、万一工具が落下して事故にでもなったら一大事。本当に信頼できる道具が必要なんです」と橋口さん。

丈夫さを追求するため、帆布も革も一般的な製品よりかなり厚めのものを選択。負荷がかかる部分には細やかに補強を施します。例えば写真のスパナ挿し(2,500円・税別)は、工具が当たる口の部分は革を二重に。裏面はズボンと擦れて糸がほつれることのないよう革で縫い目をカバーします。

こちらの腰袋も、ベルトにかかる部分は内側に革を追加して厚くし、補強。見えないところこそ大事、と橋口さんは言います。そんなもの作りが各業界で評価され、口コミで全国に。数か月待ちは当たり前ながら、オーダーは引きも切りません。

「本当に手がかかるから、量産型のメーカーではここまでできないと思います。でも、相手もみんなプロだから、これでもか!って気持ちで作ってます(笑)。実際現場で使う人は、“わかってるね〜”って言ってくださいますよ」。その他、同じ企業でも営業所ごとに異なる細かなオーダーにも対応できる柔軟性も強みです。最近では、災害現場でも活躍するドローンの端末用革ケースなども。現場の数だけニーズがあるんですね。

 

ミシン、木槌、工具。プロの道具を作るための、プロの道具も。

そんなプロのための道具を生み出す道具たちもまた、その道のプロ仕様。「厚い革を縫うのは大変なんですよ」と橋口さんが見せてくれたミシン針は、針というより錐(きり)のような太さ。糸も〈0番〉というこれ以上ない極太糸も使用しています(普通の衣服の縫製に使用するのが50番程度。数字が小さくなるほど糸は太くなる)。

先代から譲り受けた古い足踏みミシンで、一針ひと針確認しながら縫製。用途によって何台ものミシンを使い分け、「頻繁に使うものだけでも4台はある」のだそう。今ではこのミシンをメンテナンスできる技術者もいないため、壊れたら修理も自分で。「ミシン用の革ベルトも自作したりね。やればできるもんです(笑)」

職人がいないといえば、こちらの木槌も。抜き型を何万回と叩いた結果、側面がすっかりえぐれてしまっています。「硬い木じゃないと駄目なんですよ。えぐれてると実は使いづらいんだけど(笑)。作れる職人がもういないから、体を木槌に合わせながら使っています」。

【写真】なめした革やパーツはすべて国産。この革一枚を「半裁」といい、牛の半身分。背中側が固くお腹側は柔らかいなど特性に合わせて加工します。

 

こうした製品作りの技術は、橋口さんが25年かけて培ったもの。もともとは奥様の実家の家業で、「商店街の鞄屋さんかと思っていたら、実は地下に工房があって。結婚してから知ったんですよ(笑)」。義父にあたる先代に請われ、ズブの素人から職人の世界へ。さぞ丁寧な手ほどきを受けたのかと思いきや……

「全っ然(笑)。常に目の前の注文と納期に手一杯。誰も教えてくれないから、自分の仕事をしながらベテラン職人さんの仕事を盗み見て。夜、職人さんが帰ってから一人で練習しました

そんな橋口さんのために先代が作ってくれた“虎ノ巻”も見せてくれました。工房内の橋口さんの定位置近くに吊り下げ、「注文が入ったらこの設計図を見て作るんですよ」と今でも現役です。最近では、一緒に働く娘さんが図面を起こしてくれることもあるそう。この虎ノ巻もいつか三代目に受け継がれていくのかもしれません。

 

丈夫で使いやすく、オシャレ。車掌鞄に全国から注文殺到

そしてもう一つ、〈丸山革具店〉の名を全国に轟かせる逸品がこちら。昔懐かしい車掌鞄です。もちろん、こちらも全国各地の鉄道で実際に使用されているバリバリの実務品。何十年と使える丈夫さはもちろん、使いやすさもピカイチなんです。

ワンタッチで180度に開くがま口で中身がひと目で見通せ、3つに分かれた内ポケットで切符や小銭を分類することもできます。底は丸くして小銭を掻き出しやすく。革の縫い合わせ部分にさらに革を巻くなど、丈夫で長持ちの哲学を結集させたプロ仕様の鞄です。

鹿児島市交通局からの依頼で、かつて実際に市電で使われていた車掌鞄から型を取り製作した“百周年記念車掌かばん(復刻版)”は、「2012かごしまの新特産品コンクール」にて鹿児島市長賞も受賞しました。「シリアルナンバーを入れて限定100個作ったのが、1週間で売り切れた」と言いますから、鹿児島の市電ファン・鉄道ファンは熱い!?

【写真】現在も鹿児島市交通局で通信販売している車掌鞄には、交通局のマーク入り。

 

「いえいえ、それがほとんど県外のお客様でね。鉄道ファンでもない一般の方なんですよ。今では企業だけでなく個人のお客様にも多数ご注文いただきますが、大きく開いて使いやすそうな鞄レトロでオシャレな鞄として選んでくださる。年配の方には懐かしく、若い方には新鮮に見えるんですね」

車掌鞄は“S 18,000円(税別)”“M 32,000円(税別)”の2サイズ(写真はMサイズ)。斜めがけするだけでグッとオシャレに、街歩きにもサマになりますね。使い勝手もよく、一度手に取るとつい欲しくなってしまう質の良さも魅力。「10年くらい前まで、車掌鞄は電鉄会社に納めるもの。まさか個人の方に販売するなんて、まったく考えていませんでしたよ」と橋口さん。

【下写真】スクワランオイル配合の“レザーオイル 1,200円(税別)”。専用のオイルやクリームで時折ケアすると革のしなやかさが保たれるそう。

 

とはいえ、一つひとつすべて手作業のため、製品はすべて受注販売制。車掌鞄はオーダーから3か月待ちです。それでも、橋口さんが丈夫に作り込み、さらにエイジングも楽しめる牛革の鞄ですから、大事に扱えば一生モノ。手元に届く日をのんびり気長に待つのも、心弾むひと時になりそうです。

 

※現在、工房での直接販売には対応していません。注文方法等はホームページでご確認ください。

丸山革具店

住所
鹿児島市東谷山3-1-28 福留ビル1F
Tel
099-268-3559
受付時間
9:30〜17:30
定休日
土曜・日曜・祝日
主な取り扱い商品
業務用・企業向け革製品

※掲載内容は記事公開時点の情報です。最新の店舗情報等につきましては直接店舗までお問い合わせください。

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