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  • 魚も人も活きがいい。枕崎の魅力を発信する19歳の仲買人〈みんなのゑびす家〉

己の仕事に一直線。鹿児島で活躍するプロフェッショナル

たとえば、地域住民の生活に欠かせない店、鹿児島から全国・世界へ発信するアトリエ。愛されるモノづくりやサービスには、妥協することなく“仕事”と向き合うプロフェッショナルがいます。そんなプロの横顔を、少しだけ覗いてみませんか。

 

魚も相場もゼロから勉強。弱冠19歳のプロフェッショナル

枕崎港のほとりに建つ、枕崎市漁協近海魚市場。枕崎から出航した漁船が三島周辺や東シナ海などの沿岸部で獲った“近海物”が水揚げされる市場です。

朝6時40分。続々と仲買人が集まり始める市場に、ひときわ若い金髪の青年の姿がありました。今回会いに来たプロフェッショナルは、この人。弱冠19歳の仲買人・神園翔汰さんです。中学校卒業後、鮮魚事業と飲食事業を営む地元企業に就職。17歳から、仕入れを一手に担っています

枕崎と言えばカツオのイメージですが、市場にはカツオの他にも首折れサバや伊勢海老、キハダマグロなど様々な魚介が。鹿児島の海の豊かさが一目瞭然です。神園さんは、取引先からの注文の電話を受けながらも、ずらりと並ぶ鮮魚を素早くチェック。「魚は鮮度が命。身の弾力や締まり具合、エラの鮮やかさなどから魚の状態を見極めます」

朝7時。競りの開始を告げる鐘が鳴りました。枕崎の競りは、木札に値段を書いて競り人に投げ入れるスタイル。競り人の威勢の良い掛け声が響く中、頭上を黒い木札が飛び交います。その中の最高値の札が読み上げられるまで、ほんの数秒。値付けを迷う暇もありません。

競りで一番大切なのは相場を知ることですね」と神園さん。魚の種類はもちろん、季節や天候によっても相場は大きく変動。「1円差で買えたり買えなかったり。最初の2か月くらいは全然、自分の思った通りの競りはできなかったです」仲買人として自立するまでの1年間毎日メモしていた値段を元に、アベレージを出したりしながら自分なりの相場感を身につけたというから驚きです。

そんな真剣勝負の場とはいえ、市場の雰囲気はとてもなごやか。周囲の仲買人との会話に笑顔もこぼれます。「今日はムロっていう魚が揚がってたんですけど、それをクサヤにするんですって。自分はまだクサヤを食べたことがないけど、『臭いけど、口に入れたら臭いは消えるんだよ』って教えてくれて」。神園さんの魚の知識は、枕崎の魚を知り尽くした先輩たちとの会話と、それを持ち帰っての勉強の繰り返しで深まっていったそう。

仲買人としてはもちろん最年少。「あの子は頑張ってるよ〜!」と取材陣に話しかけてくれる大先輩もいるほど、みんなにかわいがられています。「みんな気さくに話しかけてくれるんですよ。初めて市場に行った時はそれが一番うれしかったし、今でも楽しいなって思う瞬間です。同級生とはしないようないろんな話も聞けて、いい経験です」

「イシダイ、◯◯円、ゑびす〜!」競り落とした魚には、飲食事業〈みんなのゑびす家〉の目印を。この日仕入れたのはハガツオ、ソウダガツオ、首折れサバ、イサキ、イシダイ、カンパチ、ハチビキ、タイ。

競りが終わるや否や、すぐに氷を敷き詰めて鮮度を保ちます。生きたままの活魚には、その場で“脳天締め(写真左)”と“神経締め(写真右)”を。「魚って暴れると旨味が逃げちゃうんです。そこで脳天を壊して仮死状態にしてから血を抜いてあげる。さらに、神経(脊髄)を破壊することで“死んだことが伝わらない=生きた”状態を作り出せるので、プリプリな食感が長持ちするんですよ」。その手さばきと確かな知識は、まだあどけない笑顔を向けてくれる19歳とは思えません。

 

カツオの概念が変わる!?枕崎の獲れたて鮮魚に舌鼓

そんな鮮度抜群の枕崎の魚を味わうべく、神園さんが働く〈みんなのゑびす家〉へ伺いました。枕崎港のほど近く、枕崎の魚と日向鶏が自慢の居酒屋です。

毎朝競りに出たあと客先への発送等を終えたら、仲買の仕事は一段落。夜はスタッフとしてお店の厨房に立ちます。仕入れも調理もするからこそ、魚の鮮度や美味しさにはこだわりが。「仕入れる予定がなくても、珍しい魚が揚がってたり、これお客さんに食べさせたいな〜と思ったら絶対買っちゃいますね

大きなカツオを手際よく捌いていく神園さん。お店に入るまで全く魚好きではなかったそう。「魚より肉!って感じでした(笑)。魚に触れるようになって、世の中にはこんなに美味しい魚があるんだ〜!って。同じ白身でも魚によって味も食感も全然違う。奥が深くて可能性があるな、と思いました」

「カツオにも何種類もあることも、仕事をして初めて知りました」例えば、今日買ったハガツオ(写真上)とソウダガツオ(写真下)。同じカツオでも、見た目からこんなに違います。「ハガツオは甘みがあってとても美味しいんですよ。でも鮮度が落ちやすいから一般的には塩煮や焼き物にすることが多い」。それを刺身でいただけるのは、漁港から直送で鮮魚が届く枕崎ならでは。

ソウダガツオは、枕崎伝統の藁(わら)焼きに。「血合いが多い魚なので生で食べるとクセが強いんですが、藁焼きにすると抜群に旨いんですよ。ハガツオとの味の違いも食べて確かめてみてくださいね」

いただくのは、〈みんなのゑびす家〉の看板メニュー“情熱のお刺身盛り合せ 1,280円(税別)”。ハガツオ、ソウダガツオの藁焼き、首折れサバ、イサキ、イサキの炙り。ついさっき競り落としたばかりの魚のオンパレード。そして漁港直送、仲買人の店だからこそのボリュームです。

ハガツオの刺身。よくタタキで見かけるカツオとは違い、身の淡い色合いと宝石のようなツヤが。「ハガツオはカツオとサワラの中間のような魚で、身も白身魚っぽいんですよ。血合いも少なく甘みがある」。獲れたてならではのもちっとした弾力に、爽やかな旨み。カツオの概念が覆される味わいです。

一方、赤身らしく深みのある色合いのソウダガツオ。藁焼きの香ばしい香りが旨みを閉じ込め、味が濃い。脂がしっかりのっている一方で、カツオならではのクセは全く感じられません。ハガツオもソウダガツオも、カツオってこんなに美味しい魚でした?というほどの驚きがあります。

「一般的に刺身やタタキで食べるカツオは、釣り上げてすぐ冷凍しているんですよ。でも、うちで扱っている近海のハガツオやソウダガツオは獲れたて。生のまま届き、保存も適切なので魚の鮮度が違う」枕崎の仲買人だからこそ提供できる美味しさです。

釣った直後に船上で首を折って血抜きし、鮮度を保つ首折れサバ。「首折れサバ本来の美味しさが楽しめるのは、釣ったその日だけ。モチモチっとした食感が鮮度の証です」輝くほどの脂ノリのよさと抜群の甘み、そしてモチっとした歯ごたえ。

市場で神経締めを施したイサキは、生と炙りで。こちらはプリップリの弾力と上品ながら濃厚な甘み。これが神経締めの効果なんですね。皮目をパリッと焼き上げた炙りは香ばしく、また違う表情で魅せてくれます。

 

活きのいい魚と人が集う豊かな町。熱い志で枕崎の可能性を発信

どれも、枕崎まで足を運んでこそ出会える味。“最幸な魚・最幸な人”と掲げられた言葉通り、「枕崎の美味しい魚でお客様や地域に元気と笑顔を発信していく、というのが自分たちのミッションなんです」と神園さん。仕事ではなく“志事”として取り組んでいます」“壁はドアだ”の言葉にも、店を地域を盛り上げようという熱意を感じます。

「何でも挑戦する、超ポジティブシンキングな社長なんですよ。おかげで自分も絶対にムリとか思わないようになりました。いつも“俺ならイケる”って(笑)。以前は仕入れの責任が重すぎて耐えられないくらいだったんですけど、今はもうへっちゃらですよ」いえいえ、それは日々考え抜いて仕事をし、実績と自信を積み重ねてきた結果。19歳にして、そこらの大人では太刀打ちできないプロの仕事人としての矜持です。

「将来のことはまだ考えていないんです。今やっていることを全力でできれば。新鮮で美味しい魚をお客さんに届けたい」という神園さん。「ハガツオはこれからが旬。秋から冬にかけては、ブリやメジナなどの魚も登場します。枕崎の美味しい魚を、ぜひ食べにいらしてください!

また、鹿児島市の〈天文館かごしま横丁〉に構える姉妹店〈みんなのゑびす丸〉でも、神園さんが選びぬいた枕崎の鮮魚を提供。枕崎の海の豊かさを、ぜひ一度ご賞味あれ。

※枕崎〈みんなのゑびす家〉で刺身など新鮮な魚介をいただけるのは17:30〜。ランチタイムは出汁にこだわったうどんや定食を提供しています。

みんなのゑびす家

住所
枕崎市西本町85
Tel
0993-72-1737
営業時間
11:30~14:00、17:30〜翌1:00
定休日
不定休
主なメニュー
情熱のお刺身盛り合せ1,280円、日向鶏ももの炭火焼き880円、北海道生カキ150円〜・焼きカキ200円〜(すべて税別)

※掲載内容は記事公開時点の情報です。最新の店舗情報等につきましては直接店舗までお問い合わせください。

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